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カタログ1996#14

■きもと造り

蒸した米と麹、水を、いくつかの木製の半切桶にいれます。しばらくすると、米と麹が水をすってふくれあがって山状に盛り上がるので、これを櫂で摺りおろします(この作業を山卸しと言います)。

山卸を数回繰り返した後、半切桶の中身をホーローのタンクにまとめます。その後、熱湯を詰めた木製の暖気樽をタンクに入れ、樽でかき回し酒母の温度を徐々に上げていきます。この作業は一日に数回、二十日間くらい続けられます。

このように、生もと造りは非常に手間のかかる造り方です。時間をかけて酒母を造っていく過程で、半切桶や暖気樽に付着していたり、酒造蔵の中の空気中に浮遊している乳酸菌や酵母(弊社では「家付き酵母」と呼んでいます)が酒母の中に入り、増殖していきます。

生もとの味や香りは、それぞれの酒造蔵の酵母により決まりますが、長時間かけて酵母や麹から清酒の「味」になる多くの物質が生成されるため、生もと独特の味が生まれるとも言われています。

■山廃造り

山廃造りは、山卸の作業を廃止したところから名前が付けられた造り方です。最初からホーローのタンクに米や麹、水を入れて「もと」を造っていく点が異なるだけで、その後の作業は生もと造りと同じです。