当社では、「御園(みその)」というブランドで焼酎を販売しています。この焼酎は、いわゆる「粕取り焼酎」で、酒粕の匂いをつけた米焼酎です。
昭和五十年代に焼酎の大ブームがありました。今ではそのブームも去り、また、ブームの最中でも匂いがほとんど無い焼酎が受けたこともあり、当社のような匂いの強い焼酎の販売数量は非常に少なくなりました。
当社も最近では、焼酎をほぼ三年に一度しか蒸留しなくなりました。今年(1995年)はちょうど焼酎を蒸留する年でしたので、蒸留の様子を簡単に記録してみました。
新潟から来ている杜氏をはじめとする酒造従業員は、四月半ばには帰郷します。帰郷までは、新酒の火入れなどで忙しいため、焼酎を蒸留する余裕がありません。そこで、焼酎の蒸留は地元の従業員が担当します。
焼酎の主原料は、米を清酒と同じように醸造して搾った液を使います。といっても、砕けた米を使い、十分にアルコール発酵させているため、そのまま呑んでもあまりおいしくありません。もちろん、搾る前の「もろみ」を直接蒸留することも可能ですが、蒸留するまでの管理が大変なので、あらかじめ搾って保存しておきます。ここまでは、酒造従業員が作業を行っておきます。
この液を蒸留して、アルコール度数を高くし、酒粕を使って香りをつけます。酒粕を使うのは、酒粕にもアルコールが含まれているので、これを蒸留するとアルコールを余計に獲得することができる、という理由もあります。
蒸留に使用する酒粕
釜の中に、搾った酒を入れます。
その上に蒸篭を乗せ、竹のすだれを敷いて酒粕を乗せます。
酒粕を入れた蒸篭を二段重ねます。酒粕を入れない蒸篭をもう一段重ねて、蓋を閉めます。粕の分量からすると、蒸篭は二段で充分なのですが、ある程度の高さが無いと、沸騰した水が蓋の中央から吹き出てしまうため、空の蒸篭を乗せて、高さを稼いでいます。
蓋を閉めた後、釜の下部から蒸気を吹き込み、内部を沸騰させ、蒸留していきます。吹き込む蒸気は、圧力がかかっているため100℃以上の温度があります。釜の中の温度が上昇すると、まず、沸点の低いアルコールが気化し、酒粕の間を通って蓋の中央のホースから出ていきます。だんだん温度が上がると水蒸気も出ていきます。
釜から出た蒸気は、背後にある装置で冷やされて、液体となって流れ出てきます。
最初のうちは、アルコール分が非常に高いのですが、だんだんと水分が多くなってきます。アルコール分が高いうちに蒸留を止めると、例えば60%の焼酎もできますが、販売する最高のアルコール度数が35%なので、最終にブレンドしたときに35%になるように、アルコール分がかなり低くなるまで蒸留を続けます。
このようにして出来上がった焼酎は、約三年ほど寝かした後に出荷されます。
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