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1997年4月
二月から三月にかけて、NHKの奥様むけ人気番組「きょうの料理」で、何回か日本酒を取り上げた。そこで取り上げられた事は、酒にも本醸造酒、純米酒、吟醸酒など様々な種類がある事をもっと知って欲しい。そしてそれに合う料理で酒を楽しんで欲しいという事であった。
日本酒を商う料理屋さんの中にも、その事について研究不足の人もある。だから、その事を、酒の小売りをされる第一線の皆様が研究した上で、お客さんに薦められれば、お客さんとの接点も広がる事と思う。
ワインでは赤ワインは肉類に合い、白ワインは魚類に合うという事など、一般の消費者にも、何となく常識的に受け入れられている。しかし、日本酒は色合いなどでは全く区別出来ないため、消費者に説明する必要がある事は、皆様も実感されていることであろう。
日本酒にも普通酒もあれば純米酒、大吟醸酒もある。味も香りもそれぞれに異なる。また、吟醸酒や生酒は冷やで飲んだ方が旨いし、純米酒や本醸造酒はぬる燗が旨い。熱燗にするなら、やはり普通酒が一番であろう。
日本酒は甘さ、辛さ、酸度等、一般的にどの様な料理にも合う成分を持っている。しかし、塩分の強い塩辛などはすっきりした甘みのある本醸造酒などが合うように思える。日本酒と料理の相性の研究も始まり、成果もいろいろと発表されている。これをそのまま信じるも良し、また自分で相性を試してみることも重要である。ここでは、私が良いと思った相性を書く。皆さんも試してはいかがか(常務註:相性診断には「酒々様々」セットが最適です)。
日本酒には種々のタイプがある事が案外知られていない様である。香りの高く、フルーティーな含み味を持つ吟醸酒もあれば、中国の老酒(ラオチュウ)にも似た純米酒の熟成したものなどもある。
吟醸酒に近い軽快なものなど、フランス料理風の生ガキなどが合うであろうし、大吟醸などサシミなどが合うように思える。フランス料理の王様として珍重されるキャビアなどは、大吟醸などとはあまり合わないと思われるが、それが非常に相性が良いという意見もある。しかし大方の人にとっては、フランス料理などにはコクのある純米酒が良いといわれている。一方それは揚出し豆腐などにもとても合う様である。
料理の事ばかり書いてしまったが、酒と一緒に食べるものを酒肴(さかな)と言われ、何か魚類を連想する人が多い。しかし「さかな」の語源を調べると、魚屋で売っている魚ばかりを言うのでなく、「酒の菜」つまり酒に添えて酒を旨く飲ませるものが「さかな」であるのだ。
だから食べ物ばかりが「さかな」ではない。北信地方で宴会の際「おさかな」を出せと言われて、東信や中南信の人たちはとまどわされた覚えのある人も多くある。その際の「おさかな」は、酒の座での芸の事であり、北信では特に謡曲を意味する事が多いようである。これは歌舞伎の「茨木」の中野最後の場面から由来するものの様である。
いずれにしても、日本酒をより楽しくするものには、酒肴があるが、和洋何れも問わずの酒肴に合うのは、日本酒の優れた特性とも言えよう。メーカーとして、はこの上なく幸せと思う。当社の酒と酒肴の相性については、近い内にまとめたものをお配りする予定である。ご期待いただきたい。
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