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酒蔵開放その後

1999年5月


三月に行った酒蔵開放については、前号でもご報告を申し上げた様な状況にて、予想外の反響があって驚いている。特に一般消費者だけでなく、御園竹を販売していただいている方からもお誉めの言葉が耳に届いている。社内では、私共が今まで酒造りのPRに関して、消極的になっていすぎたのでは無いかとの反省もあった。

しかし酒造りのPRを余りしてこなかったことについては、少々弁明させていただきたい。

酒が昔から冬に造られているのはそれなりの理由がある。酒は純粋な酵母菌を繁殖させることにより良い酒が出来る。ところが、夏の暑い気候の中では雑菌が繁殖しやすい。食べ物もすぐに悪くなり、酸い匂いがしたりカビが生えてくるのは日常体験されている如くである。大気の中にはそれ程に各種の細菌類が多くいる。しかし細菌は冬の寒さの中では育たないので、大気に含まれる細菌類の数は非常に少なくなる。私達が冬の寒さが厳しい中で酒を造るのはそのためである。

それでも大気の中では雑菌が多数生きのびている。それ故私達は雑菌の侵入をできるだけくい止める様に衛生対策に努力に努力を重ねているのである。

人間のからだには、どんな人でも非常に多くの雑菌が付いている。蔵に人が入るということは、この雑菌を蔵に持ち込むことになる。したがって、人間の出入りを制限することが最も簡単な雑菌対策の一つである。これが今まで酒造りの様子を限られた人にしか見せなかった理由である。

今回の酒蔵開放では、酒造り(仕込み)が終わった蔵の中を見学していただいた。これは仕込みが終わってしまえば、多少の雑菌が入っても、その後の消毒で何とか雑菌を防げるからである。長年培ってきた、雑菌を防ぐために内部を公開しない特殊な場所、という神秘的なイメージを優先するか、実際を広く見ていただき、より親しみを感じていただくか、の二つを天秤に掛けて、いろいろ悩んだ結果PRを選んだのが今回の酒蔵開放であった。

酒蔵を見学していただいた際にも、酒造りの本番をを見せてもらいたいという希望者も少なくなかった。しかし、今後も酒造りの本番中酒蔵を一般に開放していくつもりは無い。ただし、酒販店の皆様がご覧になりたい場合には数名ずつであればお見せできるので、ご希望があれば、お気軽に声をかけてください。

毎年の話題であるが、今年も四月の中旬に酒造りの作業全てが終わり、蔵人達は新潟に帰って行った。今年出来上がった酒は、タンク一本一本の味が均一になるように調合され、火入れを行って殺菌された後、封印され、夏の間熟成の眠りについたのである。

熟成といっても、全ての酒が同じように熟成するわけではない。半年間の熟成で秋には出荷される酒もあれば、一年以上経ってから出荷される酒もある。最近では、熟成を遅らせるために冷蔵庫に保管される酒もあれば、三年以上熟成させることを前提にした酒もある。

出来上がった酒が熟成によってどのように変わるか、毎年の事であるが、楽しみでもあり不安でもある。どんな酒になるか、秋口に期待していただきたい。

 

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