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酒造年度

1999年7月


一年の決め方は非常に多彩である。今では一年三百六十五日が普通だが、明治五年以前には、月の満ち欠けを基準とした一ヶ月が約二十九日半という太陰暦が使われていた。それ以前は天保歴に至るまで九種類の暦が使われていたと聞く。また、地方によって異なる暦が使われていたこともあったようである。これらの暦は、いずれも中国の暦が基となっていた。

太陽の回りを地球が一回りする、約三百六十五・二五日を基準とした太陽暦は、ギリシャやローマに始まりヨーロッパ方面で使われて太陽暦と呼ばれている。日本で太陽暦が採用された明治五年以前の暦は、今の私たちにとってはめんどうで煩雑なものだったろう。

しかし、年度の始まりも考えてみると種々ある。例えば、平成十一年度といった場合、いつからいつまでなのかは様々である。

一番なじみが深い年度は、学校や官庁などの四月一日から始まる年度である。国の予算の年度でもあるので、会計年度と呼ぶことが多い。また会社などでは、決算日が年度の終わりで、その翌日から新しい年度が始まる。これは事業年度と呼ばれている。これは会社によってまちまちであるが、多くの会社が会計年度に合わせている様である。たいていの人が関係ある年度は、この二つであろう。

その他に重要な年度として、食糧年度、酒造年度がある。食糧年度は米年度、米穀年度とも呼ばれ、これは十一月一日から始まる。たぶん新米が流通し始める時期を年度の始めとしたのであろう。

われわれに関係ある酒造年度は、七月一日から始まる。昭和三十年代の中頃までは十月一日から始まっていた。秋に収穫された新米で、新酒を作り始める時を年度の始めとしたのであろう。しかし、十数年前に突然酒税関係の年度が七月一日に始まるようになった。多分大蔵省の歳入予算作成のための便宜からであろうと私は思わせられたが、メートル法の強制施行の時期と同じ頃だった事も興味深い。

今は冷房設備などを整えて、冬だけでなく春や秋も酒を造る三季醸造をする会社も増えてきた。その様な会社でも、真夏は製造を避けるため、六月の終わりには造りを終了しているところが多い。それから考えると、酒造年度も理にかなっているのではないだろうか。

しかし、酒類関係のみならず、役所は種々の数字の提出を求めることが大変お好きである。ところが一年間累計の数字が暦年の事もあり、会計年度、事業年度の事もある。さらに酒造年度が加わると、報告書を作成する身ともなれば、あまりうれしい事ではない。

御園竹便りは、平成五年の七月、平成五酒造年度から始めた。いつの間にか六年目に入った。なるべく内容が重ならないようにしているので、これだけ続けていると、話題を探すのに苦労する月もある。しかし、お客様と我々を結ぶ大切な便りであるから、できる限り長く続けていこうと考えています。

この便りで取り上げて欲しい話題があれば、お気軽に声を掛けてください。

 

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