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酒造雑話…日本酒と料理(3)

2000年9月


酒好きの人間にとって、酒は一生の友である。長く酒を呑み続けるためには、健康に注意して呑みたいものである。すき腹で酒を呑むと、酔いが回るのが早いことは誰もが経験していることであろう。やはり食べながら呑むことが健康の秘訣である。では、どんな食べ物と一緒に酒を呑むのが良いのだろうか。お酒と健康についての研究が多くなされているが、その中で、タンパク質、特に動物性タンパク質を摂取すると身体の中でのアルコールの分解能力が高まるということが確認された。昭和四十年頃に較べて日本人のアルコールの摂取量はずいぶん増えてきている。これは所得が伸びたためアルコール飲料が比較的買いやすくなったこと、女性がアルコール飲料を呑むようになったことなどの原因もあるが、それにも増して食生活が変わり、動物性タンパク質の摂取量が増え、アルコールを分解する能力が高まったためらしい。残念ながら、植物性のタンパク質、例えば大豆タンパクの代表である豆腐などではあまりアルコールの分解能力は高まらないようである。冷奴で一杯、という場合は、もうちょっと奮発してマグロの赤身かなにかを追加するだけでアルコールを分解しやすくなるということを覚えておいて欲しい。これなら低カロリー、低脂肪でヘルシーな酒の呑み方であろう。洋風の食事であれば大部分が動物性タンパク質を含んでいる。しかし大概においてそういった料理は脂分が多く、また味も濃い。こういう料理を食べると、日本酒の微妙な味わいが損なわれてしまうおそれがある。話がそれるが、最近の純米酒志向は、一つには味の濃い料理が多くなったので、それと一緒に呑む日本酒も味のしっかりした物の方が合わせやすいということから来ているような気がする。

そこで、日本酒の微妙な味わい、「旨味」を損なわない食べ物を幾つか考えてみた。一つには魚類があるが、これは当たり前過ぎるので、別のもの。それは乳製品、特にチーズである。昔はチーズというとプロセスチーズくらいしかなかったが、最近は色々なチーズが手に入る。その中でも淡白な味わいのチーズを選んで日本酒を呑んでみよう。お薦めはフレッシュモツァレラチーズ。くせの無い弾力のあるチーズで、かまぼこの様に切って、醤油をつけたり、塩と荒挽き胡椒で食べると口中の感触も良く、日本酒の微妙な味わいが楽しめる。カッテージチーズなどもあっさりしていて日本酒に合う。きゅうりの薄切りの上にカッテージチーズを載せ、イクラを数粒載せるとお客様に出してもおかしくない一品となる。クラッカーなどの上に載せるより、野菜に載せた方がずっとおいしいと思う。チーズには癖があっていやだと言う人には、自家製のチーズもどきはどうであろうか。牛乳を煮たてて、そこに塩を少々、酢やレモンの絞り汁を少々入れてさらに煮ると牛乳のタンパク質が固まってくる。これを布巾で搾ると出来上がりである。牛乳の旨味が凝縮されて、癖の無い上品なつまみとなる。牛乳を古くしてしまったときなどに一度試されてはいかがだろうか。九月下旬に日本酒の旨味を十分生かした酒、秋の旨酒「秋本番」を発売する。この酒とチーズの相性をぜひ試して欲しい。

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