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1995年3月
陽射しがややゆるみ始めるこの時期、二月の下旬になると「どうころばし」(甑倒し---こしきたおし)の頃となる。
寒造りの最中には、厳寒早朝も暗いうちから毎日酒を仕込む。その、寒造りの一日は米を蒸すことから始まる。蒸した米が麹となり、また掛け米として酒が仕込まれていくのである。
昔は、米は和釜で蒸していた。その和釜の大きさは直径が二メートル近くもあり、六尺釜と呼ばれている。そして、その上に直径六尺近い大桶が乗せられる。その大桶は非常に頑丈に作られ、廻りにぎっしりと縄が巻かれている。桶の底の中心には蒸気の通る穴が開けられ、その上にさな板が置かれている。
下の和釜の中の湯は激しく沸騰し、お湯が蒸発し、桶の中心の穴から吹き出し、その上に米が一面に平らに置かれている間を通っていく。餅をつくとき蒸篭(せいろう) で餅米が蒸されるのと同じである。酒造りの季節を通じ厳寒の早朝にそれは毎日行われていく。その米を蒸す器 (木桶など)を甑(こしき)と呼んでいる。
酒の仕込みが順調に進み、もう米を蒸す必要がなくなると、その年の秋が来るまで、その甑は冬の労苦が感謝されて夏期の休養に入る。この日を「どうころばし」という。
勿論、これからも醪は発酵を続け、酒搾りはずっと続けられ、濾過、火入れ、貯蔵、瓶詰め等、消費者の口に入るまで多くの酒造りの仕事が続くわけである。
しかし、この日は酒造りの仕込みが一段落をした日として、米を蒸す甑を釜からおろして横に倒すという意味をこめて甑倒し、または「どうころばし」といい、社内で祝杯を上げ、今後の酒造りの無事を祈るのである。
家庭の和釜が電気釜にとって変わられたように、酒造米もボイラーで作られた蒸気で蒸されている。しかし、蔵人にとっても早朝の米蒸しの仕事から解放されるこの日はうれしい日であり、酒造業者にとっては、本年の酒造りの節目ともなる日なのである。
菰樽をご注文いただくにあたり、次のことにご注意くださるようお願いいたします。
菰樽は、みなさまもご承知のとおり、杉の木の板を竹で編んだ「たが」で締めたものです。杉の木が水分を吸収して膨張する。そこを「たが」で締めてあるので板と板との隙間がなくなるために、酒が漏れずにすむ訳です。
菰樽の中身
したがって、樽を出荷するためには、あらかじめ樽に水をはって、十分に水を吸わせて隙間が無いことを確認してから酒を入れる必要があります。
ですから、菰樽をご注文くださる際には、遅くとも、ご使用になる日の二日前までにご注文くださるようお願いいたします。また、ご注文の際には、鏡割をするのか、呑み口を使うのかの区別もご連絡ください。
最近は、お酒を飲む量が減ったこともあり、四斗樽に二斗だけ詰めた上げ底の樽も用意しています。下に小売価格を記しますので、受注の際にご利用ください。
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