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1996年1月
盆暮れには普段の「御園竹」の他に、「牧水」も良く売れる。と書くより、二級酒の他に一級酒や特級酒が売れるといった昔の言い方のほうがしっくりくる人がまだ多いのではなかろうか。
御園竹便りNo.15〜17で書いたように、昔は酒は等級により区別されていた。当社でもそれに合わせて、包装紙を見ただけで酒の種類がわかるように、特級は金包み、一級は銀包み、二級は白い紙包みで出荷していた。この包装紙による区別はいまでも残っている。
昔はこういった単純な区別だけで良かったのだが、消費者の好みが多様化してきたのに伴い、級別とは別な区別が必要になってきた。今ではもう馴染みの、本醸造とか純米といった、酒の製法や品質による区別である。この区別は、昔は日本酒造組合中央会の自主基準であったが、平成元年に国税庁公示第八号「清酒の製法品質表示基準」として国によって規定され、今に至っている。
といっても、級別制度がある時代は、本醸造、純米といった区別よりも級別の方がわかりやすかった。当社の生もと造りの酒がそうであった。覚えている方も多いだろうが、以前は生もと造りの純米、本醸造といった区別より、一級の牧水(生もと純米)、二級の牧水(生もと本醸造)といった級別の区別の方が通りが良かったのである。
しかし平成四年の四月一日から級別が廃止され、級別によって酒の性質を大まかに分類することができなくなった。それに代わって、先に書いた製法品質表示基準による分類、特に純米、本醸造、吟醸といった特定名称が、消費者が酒を区別するための最も重要な拠り所になったのである。この他にも表示基準では色々な事が定められている。生酒、生貯蔵酒の違いや、原酒、生一本、樽酒といった各種の用語が規定されている。
この表示基準は、消費者が酒を選ぶための一定の尺度を提供するものであるから、少なくとも特定名称に関しては、酒販免許を持っている者、すなわち酒の専門家として、消費者にいつでも説明できる勉強をしておく必要があるのではなかろうか。
もちろん、特定名称の意味が分かっているだけではそれぞれの酒の説明にはならないし、特定名称だけで酒の味がわかるわけではない。また、特定名称自体、メーカー主導で出来たものであるから、これが消費者にとって最上の分類かどうかという疑問もある。最終的には酒販店の皆様の今までの経験と、親身のアドバイスが消費者にとって一番役に立つのであろう。
しかし私が強調したいのは、酒販免許を持っている者は、お酒に関するプロフェッショナルであるという意識を持ってお客様に接していただきたい、という点である。そういった意識がない酒販店が多くなると、行き着くところは誰が酒を売っても構わない状態、すなわち小売酒販免許制度が崩壊して自由化という事につながっていくのでは無いだろうか。
当社でも酒販店の皆様方のお手伝いをさせていただくために、いろいろな資料を用意しています。特定名称や当社の酒の説明などでわからない点がありましたら、ご納得いくまでご質問いただければ説明いたします。どうか、気軽に声をかけてください。
最後になりますが、酒類業界にとっては厳しい時代でありますが、互いに協力しあって平成八年が良い一年となりますようにがんばりましょう。
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