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酒米収穫の候

1996年10月


十月の声を聞くと、稲刈りの季節となる。当社の酒造りを担当する杜氏は、新潟県出身で、越後杜氏と呼ばれ、代々当社の杜氏を勤め、御園竹造りにいそしんで四代となる。その杜氏からの九月の中旬の電話では、越後ではもう稲刈りが始まったとの事である。稲刈りをすませ、米の出荷をすませて、いよいよ酒造りのために入蔵するのである。

杜氏達の出身地では、飯米としては、昔より有名な「越光」を主として作っている。その他に、酒造好適米に指定されている「五百万石」や、少量ながら「山田錦」が作られている。長野県では以前は「豊年早稲(ホウネンワセ)」が主流であったが、近頃は「越光」が主流となった。酒造好適米としては五百万石と同じく著名な「美山錦」がある。その他長野県の銘柄の酒造好適米としては「タカネ錦」「金紋錦」もある。これらも現在では東北地方の様な気温の低い地方でも栽培されるようになってきたが、長野県の誇るべき酒米なのである。

酒造好適米は現在三十三品種六十九産地(二十七府県)にも及ぶが、その内Aランクに指定されているのは、長野県を含め六県の七品種に限られている。飯米として越光で新潟県に名をなされているが、酒造好適米においては長野県の米が名をなしているのである。

酒造好適米は酒造用として、改良に改良を重ねられてきたものである。栽培も困難で小収量なため、飯米より高値である。人気の品種では、ササニシキやコシヒカリの様に食用として人気の高い品種より一俵あたり五千円から一万円も割高である。酒の原価に米代の占める割合は三分の二近くであるため、入手可能な好適米を麹や酒母に使用して、掛米は精米の技術でカバーしているのが大方の現状ではなかろうか。

酒造好適米の産地特性としては、高地で水がきれいであり、日照時間が長く、昼夜の温暖の差が大きな地方が良いとされている。その点、当地方などでは酒造好適米に指定されていない米も、好適米と同じ条件の下に栽培されているのである。私が前から、高価な山田錦よりも、地元で作られた一般米の豊年早稲の方が良い酒を造りやすいと感じていたのはその事が原因だったらしい。

酒造好適米に私共がこだわるのは、米は大粒であって、米を透かして見ると中心の部分の心白と呼ばれる部分が多い。そのためか、軟質で溶けやすく糖化しやすい。表面近くの蛋白質や脂肪が少なく、低温で発酵させる吟醸造りには欠かせない性質を持っているのだ。

とはいえ、全ての酒を酒造好適米で造る訳にはいかない。御園竹は一般米も使っている。一般米でも三十%以上は削り取って蛋白質等を極力減らして使用するのである。総量は数千俵、数百トンに達する。

今年も稲の生育は順調だったようである。頭を下げた稲穂が豊かに稔って精穀されて私達の下に来る日を楽しみに待っているこの頃である。

おかん瓶

今月末頃の出荷より、「牧水」のおかん瓶をグリーン瓶に変更いたします。それに併せて、全てのおかん瓶のキャップを、栓抜きの要らないプルタブ式に変更いたします。お客様からの、これまでのキャップの方が良かったとか、変えて良かった等の感想をお聞きになった場合は、できるだけ営業の者にお伝えくださるようお願いいたします。

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