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1996年11月
秋も深まり、山々は紅葉に彩られた。紅葉の美しくなる季節は、米の刈り入れも終わる頃である。米作農家は田の周囲の山々の紅葉に囲まれ、米の最後の調整に精を出す。
その米が、今年の新米として私達の酒蔵へ入ってきて、酒造りの杜氏達の手でわが国の世界に誇るべき国酒である「日本酒」に醸造されるのである。
秋が深まるこの季節は、杜氏達も米造りを終え、冬を越す準備を整え、半年間家を離れて蔵へ入る時期である。それらについては、この御園竹便りの中でも何度も書いているので思い出していただきたい。
しかし優れた杜氏も、日本経済の近代化に伴って、政治の変化、経済の変化に伴う農業の変化の波にもまれてしまっている。
杜氏を中心とする酒造りを支える技能集団の全体の問題である。池田内閣から始まり田中内閣に至る日本産業構造の変化がそれだ。日本の産業の中心が農業から工業へと移り、世界有数の工業主導国となった結果、農家の後継者問題が浮上してきた。農業後継者の不足の問題は深刻である。それが杜氏不足につながる。商店の後継者不足も同じ問題であろう。
御園竹でも今のうちにその問題の解決に取り組まなければならないと考え、地元の技術者の育成にとりかかっている。従来の季節雇用の杜氏達の手によって酒を造る現在の体制から、地元に住んでいる人々の手で酒を造っていく体制へと緩やかに変化させていくことを考えている。
将来は、通年雇用の酒造技術者が中心となり酒を造り、地元の季節雇用の人々と一緒に酒を造っていくことになるであろう。本年はその第一歩として、将来の酒造りを担う青年が国内の遥か遠方より希望して入社してくれた。当社の常務が全国に発信しているインターネットのホームページを通じて酒造りを目指したいとの意をいただいた人である。今後も通年、季節を問わず、酒造りを仕事としたい人を採用していく予定であるので、皆さんの周辺で心当たりの方がいらっしゃったら、是非声をかけていただきたい。
さて、インターネットという言葉を聞いたことのある人は多いと思う。当社の常務は酒類業の中にインターネットを導入した人間としては、わが国でも早いほうの人間である。その事は当社としては大変誇りに思っている。営業の面で役に立っているのかは分からないが、少なくとも酒造業界の中では名前を知られるようになったようである。
これからはメーカーのみならず、小売業者もインターネットなどの知識をもって将来へ対応する時代もあろうかとも思える。その際はどうか常務を活用していただきたい。また皆様や、また将来を担う子供さんたちとも、その点でも是非協力し合おうではありませんか。
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