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原料処理

1996年12月


先月の便りで書いたように、忙しい米作りを終えた杜氏達が、十一月に勢揃いして入蔵し、当社の蔵は活気づいてきた。

杜氏達は蔵へ入ると、蔵を掃除し、夏の間使われていなかった設備を手入れし、酒造りの準備を整える。そして、いよいよ酒造りの第一歩が「洗い漬け」、すなわち、米を蒸す準備として、米を洗い水に漬ける作業である。

杜氏達は、よく「毎年が一年生」ということを言う。これは、年々の天候などによって米の出来が違うため、その年の米が堅いか柔らかいか、粒が大きいか小さいかなどに合わせた造り方をしなければならないからである。それだけに、毎年の最初の米洗い、浸漬(しんせき…米を水につけること)は非常に気をつかう。

まず米を洗う。これは酒造りの最初の工程であるが、非常に重要な作業である。以前にもふれたが、食卓に上る白米は玄米を八%程度しか削りとっていない。酒米はというと、当社の場合一番黒い米(あまり精米していない米)でも、全体の三十%は削り取った米である。大吟醸ともなると全体の三分の二を削り取り、中心の三分の一しか使わないのである。米の表面に多く含まれるタンパク質が酒造りのじゃまになるため、外側を削り取ってしまうためである。

どんなに最新鋭の精米機を使ったとしても、白米の表面には粉糠が付いてしまう。粉糠が付いたままの白米を使ったのでは、結果的にあまり精米していない米を使うのと同じ事である。酒造りの最初の洗米は、いかにして粉糠を取り除くかという点である。とはいっても、普通の飯米を洗うように、ごしごしと研いでいたのでは米が割れてしまう。時間をかけて洗っていたのでは、米が水を吸いすぎてしまう。最近は洗米機があるので作業が楽になった。それでも、トン単位の米を丁寧に処理するのであるから非常に気を使う作業である。

洗米が終わると、一定時間米を浸漬させる。毎年の最初の米洗いではこの部分が一番気を使うところである。その年によって、米の硬さが違い、水の吸い込み方も違う。浸漬時間を調整して、翌朝米を蒸す前までに米が吸い込む水分を前の年と同じにしなければならないのである。昔ながらの造り方といっても、こういう点はきっちりと数字でおさえてていかなければ一定した味の酒を造ることはできない。

余談になるが、大吟醸用の三分の一程度までに削った米は、米洗いから浸漬まで、すべてストップウォッチを使って秒単位で時間を管理し、米の水分を調整している。これについては、今後の便りで触れることにする。

今年もすでに何トンもの米が洗われ、蒸され、仕込まれている。あと一月もしないうちに新酒となって皆様のお手元に届くであろう。今年も良い酒をお届けするよう、最初から最後まで気を抜かずに作業することをお約束して今月の便りとさせていただきます。

秋の品評会入賞

「御園竹 大吟醸」は、今年の秋の関東信越国税局の酒類品評会で優等賞をいただきました。これを励みに、今年も良い酒を造るよう努力いたしますので、相変わらぬお引き立てをいただきますようお願い申しあげます。

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