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暖冬

1999年3月


普段の年の二月は厳寒の季節である。ところが今年は、それほど寒いとは思えない日が続いている。いわゆる「暖冬」とでも言えるかと思うが、それでも寒い朝などは零下十度近い朝が続くのだから、世間一般の尺度では暖冬ではないのであろう。

今、この便りを書いている二月の下旬は、吟醸造りが大詰めを迎える時期である。良い吟醸を造るには、冬の寒さが必要不可欠である。吟醸の醗酵は非常に低温で行われる。醪の温度は最高でも十度、醗酵の進み具合によっては醗酵の最後の温度を五度以下に押さえなくてはならないこともある。醪は放っておけば醗酵に伴う発熱により温度がどんどん上がってしまう。これを低い温度に保つのが杜氏の腕である。勿論冷やしすぎてもいけない。醗酵が止まってしまう。この微妙な温度の管理をして良い吟醸を造ることができる杜氏や蔵人は、他の酒の温度管理もきちんとできる。即ち、全ての酒を上手に仕上げることができるのである。これが我々が吟醸造りを重視している点の一つである。

普段の年の様に、日中の最高気温が氷点下の日が続く年であれば苦労は少ない。ところが今年のように若干暖かい年は、杜氏達の苦労は大変である。雪をタンクの回りに貼りつけたりして、何とか温度を下げなくてはならない。今年は雪が少なかったので、雪を集めるのも一苦労であった。それ故に、今年は我々の尺度では「暖冬」であるのだ。

勿論、昨今は冷却装置などが普及してきたので「冷やす」ことに関しての苦労は少なくなってきている(当社の冷却器が五度までしか下がらないので杜氏達は苦労したのである)。それでもやはり、良い酒を造るには冬の寒さが一番なのである。逆に言えば、日本酒は日本の今の季節に一番適した醗酵酒なのであろう。

酒蔵開放

三月二十一日に、一般の方々に当社を見学していただく企画「酒蔵開放」を行います。皆様方の中にも、当社の酒蔵をご覧になっていない方もいらっしゃるかと思います。この機会に是非ご来社ください。

酒蔵に大勢の人を入れることに関しては、社内でもいろいろな意見がありました。一番の問題は細菌汚染などの問題です。どんなに清潔にしている人でも、かなりの細菌が付いています。大勢の人が入るとそれだけいろいろな細菌が蔵の中に入ることになります。これは非常に危険なことです。しかし、この問題は、当日以降の清掃・殺菌等で対処することにして、皆様方に蔵の中(ほんの一部ですが)をご覧いただくことにしました。やはり、日本酒の造りを身近に感じていただくことが日本酒に親しんでいただくために必要なことではないかと考えた次第です。

この様な催しをやるからには、ご来社いただいた皆様に楽しんでいただけるよう、様々な企画を用意しております。お酒が好きな方には、今年の新酒全てをきき酒していただける様準備しております。また、お酒が呑めない方には甘酒を用意いたします。その他、酒米のお粥などの試食もあります。

その他、当社自慢の木製の道具の数々、桶造りの実際、酒林の作成の実演なども、なかなか見ることができないものでしょう。

皆様はもちろんのこと、皆様のお得意様にも広くお知らせいただき、お誘い合わせの上ご来社下さいますよう、お願いいたします。

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