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酒造りと音楽(2)

2001年3月


今月も常務が書きます。

今月の題材を考えるために、社長の書いた御園竹便りを読み返していたら、ちょうど五年前の三月の御園竹便りNo.21で酒造りと音楽の話題があった。他の蔵元でお酒の醗酵中に音楽を聞かせたら良いお酒ができた、という話が取り上げてあったのを覚えておられるだろうか。

私も音楽と酒の関係がずっと気になっていたので、普段からいろいろと気をつけていると、雑誌などの記事で、植物などに音楽を聞かせて発育が良くなった話は時々見かけるし、最近では醸造関係の雑誌などにも、音楽と酵母や細菌の繁殖の関係の話が載ったこともある。そういった記事を総合してみると、モーツァルトの音楽、それも長調の音楽が生物の育成に効果があるようである。これは便りNo.21の中で社長が書いてあることでもある。

音楽を聞かせて仕込んだ酒も幾つか入手して呑んでみると確かに柔らかい味がするような感じがする。そこで、いつかは音楽を聞かせた酒を造って見たいと思っていたが、なかなか実現できずにいた。

というのは、蔵全体に音楽を流すのは簡単だが、これでは果たして音楽のために味が変わったのか、その年の気候による違いなのかがわからない。タンクごとに音楽を聞かせる方法がなかなか見つからなかったこと。もう一つは、音楽(演奏)の著作権の問題で、できれば、当社のために演奏した音楽の入手方法である。できれば、お酒のことを思いながら演奏したものが欲しかった。

しかし、期が熟したというのであろうか、今年になってこの二つの問題が一気に解決した。

物に貼りつけてそれを鳴らすことのできるスピーカとの出会いである。これはある雑誌で個人向けの商品が出ているのを見つけ、インターネットなどで製造元を調べて連絡を取ったところ、快くタンクの大きさにあったサイズのものを特注で作ってくださることになった(しかも値段は驚くほど安い)。

また、演奏の方は、私の妻にピアノの演奏を頼んだ。一番下の子が二歳になり、比較的手がかからなくなってきたので、家事の合間に練習する時間が取れるようになったのである。

曲は、やはりモーツァルトのピアノ曲から選んだ。前にも書いたが一般的には長調の音楽の方が良いとされているようだが、生き物を育てるということでは、変化に富んだ曲の方が良いだろうということで、「幻想曲・ソナタ ハ短調」を選んだ。約三十分ほどの演奏である。これを繰り返し醪に聞かせた。(mp3ファイルでサンプルを用意しました)

録音・編集も以前だったらいろいろな機材が必要だが、今回はパソコン一台で録音・編集ができ、さらにCDを作製することができたのも「期が熟した」からであろう。

この音楽を聞かせて醗酵させた酒は、この便りを書いている時点ではまだ搾る段階にはならないが、先入観があって見るせいか、別のタンクで仕込んでいる同じ種類の醪より幾分酵母が元気が良いような気がしている。この酒が搾れるようになるのが待ちどうしくもあり、また不安である。

三月二十日の酒蔵開放の時には、この音楽を聞いていただきながら、音楽を聞かせた酒とそうでない酒のきき較べをしていただく予定である。ご期待ください。

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