生酛(生もと)造り

酒母ともろみ

日本酒は、主に米、米麹、水から造られます。米麹中の麹菌により米のデンプン質が糖に分解され、清酒酵母によって糖が発酵されてアルコールになります。

清酒を造るのに必要な米と米麹、酵母などを一度に混ぜてもなかなか発酵しないため、まず少量(全量の一割程度)の米、米麹を使って清酒酵母を十分に増殖させた「酒母(しゅぼ)」を造った後、この酒母と残量の米、米麹を混ぜて発酵をさせ、できあがったもろみを搾って清酒を造ります。酒母のことを「もと」と言い、「生酛(生もと)造り」は、この「もと」の造り方に特徴があります。

速醸酒母と生酛(生もと)系酒母

酒母は、速醸酒母と生酛(生もと)系酒母に分けられます。速醸酒母は、あらかじめ化学的に培養した清酒酵母と米、米麹、水、合成乳酸を混ぜて、一週間程度で酵母を増殖させたものです。生酛(生もと)系酒母には、古来よりの生酛(生もと)造りによる「生酛(生もと)」と、生酛(生もと)造りを少し簡略化した「山廃もと(やまはいもと)」があります。どちらも、化学的に培養した乳酸菌や酵母を使わず、昔ながらの製法により、一月ほどかけて自然のままの乳酸菌や酵母を増殖させたものです。

生酛(生もと)造り

山卸し(やまおろし)

【山卸し】

蒸した米と麹、水を、いくつかの木製の半切桶にいれます。しばらくすると、米と麹が水をすってふくれあがって山状に盛り上がるので、これを櫂で摺りおろします (この作業を山卸しと言います)。

【暖気樽と樽でかき回し】

山卸を数回繰り返した後、半切桶の中身をホーローのタンクにまとめます。その後、熱湯を詰めた木製の暖気樽 (だきだる)をタンクに入れ、樽でかき回し酒母の温度を徐々に上げていきます。この作業は一日に数回、二十日間くらい続けられます。

山廃

山廃造りは、山卸の作業を廃止したところから名前が付けられた造り方です。最初からホーローのタンクに米や麹、水を入れて「もと」を造っていく点が異なるだけで、その後の作業は生酛(生もと)造りと同じです。

生酛(生もと)造りの特徴

このように、生酛(生もと)造りは非常に手間のかかる造り方です。時間をかけて酒母を造っていく過程で、半切桶や暖気樽に付着していたり、酒造蔵の中の空気中に浮遊している乳酸菌や酵母(弊社では「家付き酵母」と呼んでいます)が酒母の中に入り、増殖していきます。

生酛(生もと)の味や香りは、それぞれの酒造蔵の酵母により決まりますが、長時間かけて酵母や麹から清酒の「味」になる多くの物質が生成されるため、生酛(生もと)独特の味が生まれるとも言われています。

弊社のこだわり

弊社では創業以来、生酛(生もと)系酒母による日本酒を欠かすことなく造ってきました。これは、家付き酵母による独特の風味をいつまでも提供し続けたいという思いと、生酛(生もと)造りの技術を保存したいという思いによるものです。

生酛(生もと)によりできた酒は、腰が強く、土用をすぎても酒の味がさほど変わらないと言われています。また、弊社では、生酛(生もと)によりできた酒をレギュラー酒にも混和しています。これが皆様に親しまれている「御園竹」の味となっているのです。

また、技術の保存という点では、生酛(生もと)造りに欠かすことのできない木製の半切桶や暖気樽を欠かさぬよう、酒造りが行われている冬の間中、専属の桶職人が勤務しています。このような蔵は、全国でもほとんどありません。

この思いから生まれた 「生酛(生もと)牧水(純米酒、本醸造酒)」の味を楽しんでいただければ幸いです。