【2023年】酒蔵開放を終えて

2023年4月22日、23日に第23回の酒蔵開放を無事終えることができました。
来場者二日間では1,000名弱、そのうち(有料で)試飲をされた方が500名弱という結果でした。

当社の酒蔵開放は1999年が初回開催で、コロナ禍前に21回開催し、最後の方では一日の開催で1,700人ほどの来場者がある一大イベントでした。コロナ禍で2年休止し、昨年はコロナ禍でのお酒の試飲会をどう運営するかの研究も兼ねて縮小して開催した上で、満を持しての本年の開催となりました。

コロナ禍前は、試飲は全て無料で、来場者数の多さを喜んでいたところもあり、ちょっと派手にやり過ぎたところもありました。「多くの人にタダで酒を呑ませて、商売に結びついているのかよく考えろ」といった意見、「試飲する方からお金を戴いた方が良いですよ」と多くの方からの忠告、「お宅はお大尽だから」という揶揄。コロナ禍の時間は蔵開放の在り方を考える良い機会でした。

コロナ禍明けの酒蔵開放の方針

実はコロナ禍が始まる直前の2020年1月に杜氏が交代しました。本来なら2020年の3月の蔵開放で新しい杜氏のお披露目をして、新しい杜氏の作った酒は今までの酒と変わったのか同じなのか、新たな商品は出来たのか、などなど皆さんに広く知ってもらう機会とする予定でした。その後丸二年以上に渡り、流通にも消費者にも新しい杜氏のお酒を紹介する(売りこむ)ことができないでいました。

その時思ったのは、お酒を知ってもらうには言葉を尽くすことも必要だけれども、一口飲んで味を知ってもらうことには敵わない、ということでした。それを念頭に置いて当社の蔵開放の企画を立てました。今年はお酒を楽しく味わっていただくことを重点に考えようと。

有料で18種類の試飲

試飲をされる方は御一人当たり500円のご負担をお願いすることにしました。ただし、甘酒(これはお酒ではありませんが)と十二六(どぶろく)三種だけは無料で楽しんでいただけるようにしました。

提供するお酒は、以前の蔵開放よりずっと数を絞って、新酒が六種類、火入れのお酒がそれぞれ六種類、熟成酒が三種類、どぶろくが三種類、計18種類としました。

沢山の種類のお酒を自分のペースで飲める。味見ならばほんの少々注ぎ、たくさん飲みたいお酒は沢山注ぐ。もちろんお替わりも制限無し。というのが当社の蔵開放のスタイルでした。そこで今回の酒蔵開放では次の二つのタイプの試飲をしていただきました。

じっくり味を味わいたい、という方には着座での試飲を。好きなお酒を心行くまで堪能したい、という方にはテーブルにずらりと並んだ酒瓶から好みの量を注いで試飲を。と試飲を二つのタイプに分け、どちらでもお好きな飲み方を選んでいただく方式にしました(両方でも構いません。)

着座でゆっくり試飲

新しく完成した試飲スペース

着座での試飲に関しては、前年2022年に小規模開催した際に行ったのと同じく

  1. 180cmのテーブルに二人ずつ着席し、人と人との間にはパーディションを置く。
  2. 小さいプラカップが六個入る穴を空けたダンボール製のトレイを用意し、六種類のお酒を配膳する。
  3. 最初の六種類のお酒を飲んでいただいている最中に次の六種類のお酒も配膳する。
  4. 試飲される方には、全てのお酒の説明を書いた紙をお渡しする。

というやり方で新酒と火入れ酒、計十二種類のお酒を召し上がっていただきました。一種類20mlから30mlお注ぎしましたので、全体では一合半から二合程度の量を提供しています。コロナの感染対策を考えて三十分で総入れ替え制としたため二十分程度しか試飲の時間がとれなかったので、ほんとうにじっくり味わうという訳にはいかなかったことは申し訳なく思っています。

心ゆくまで試飲

お酒を心ゆくまで堪能したい方のための試飲会場では、着座試飲でお出しした12種類のお酒に、熟成酒(大吟醸二十三年熟成、貴醸酒二十三年熟成など)3種類を足した15種類です。

15種類のお酒は、ご自分で注いで飲んでいただく形式としました。ご自分で注いで試飲するのになれていない方も多かったので実際にはスタッフが説明しながら注ぐ方が多かったようです。

重田杜氏には主にこの試飲会場にいてもらい、次の酒造りに活かすよう、なるべく多くの人と話して、お酒に対する意見、会社に対する意見など聞いてもらいました。ある程度の成果は得られたようでした。

来場者とお酒について話をする重田杜氏

この試飲会場で一番人気は、大吟醸山田錦無濾過生酒で、720mlビンで23本試飲に提供しました。このコーナー全体では720ml瓶で約130本(93L)でした。

着座での試飲は席が全て埋まると320名の予定でしたが、準備・片付けのために試飲の回数を減らしたり、人数が揃わずに空席があったりとかで280名ほどの試飲でしたが、これは今回有料で試飲された方の半分以上の数でした。想像以上の結果に驚いています。

また、どぶろく三種類は無料で試飲していただくことにして甘酒と同じ場所での試飲としました。

お酒の販売

今回は、十二六など一部の商品を除き、試飲していただくお酒も、販売するお酒も全て720ml瓶での提供とし、試飲できたものしか販売しないという方針にしました(一部火入れの有無、醸造年度の違いはありますが)。

お酒にも番号を振り新酒はA1~A6、火入れ酒はB1~B6などとして番号でどのお酒なのかが間違いなく分かる様にしました。事実、お客様の声を聞いていると、「やっぱりA1が一番だ」とか、「B1とB2はやべーぞ。凄すぎる」といった会話が聞こえてきましたので、役に立ったのでは無いかと思っています。

食事のご提供

試飲の口休めは今までと同じ野沢菜。四月も半ばを過ぎていたためいつもの古漬けの提供はあきらめて、時漬け(十日間ほど塩漬けしたもの)を刻んで、葉の千切りとレモン果汁を混ぜたものだけを提供しました。野沢菜の量は53kg、若干残りましたがたぶん45kg程度は捌けたと思います。甘酒・どぶろくコーナーの近くで提供したため、甘い甘酒やどぶろくの口休めにもなったようです。

その他、手打ち蕎麦とハンバーガーもコロナ禍前と同様にお願いしました。ハンバーガーは両日とも午前中で売り切れ、蕎麦も早々に売り切れてしまい、残ったら当社スタッフがおいしくいただこうと思っていたのですが、それも叶わず残念でした。

社長宅の居間と座敷でひと休み

2022年の第三回目より、社長宅(本宅と呼んでいますが)の茶の間、中座敷等を開放し、ここでお茶やお菓子などを召し上がってひと休みできるようにしました。

最初の頃の目玉は「日本酒カクテル」。これは(株)一ノ蔵さんで考案されたカクテルをヒントに、低アルコール酒や当社の焼酎などに抹茶を混ぜて、お手前風にお出しするものでした。これは2006年まで五年間続けましたが、来場者が増えてきたため対応が難しくなったため、その後数年はお抹茶(お薄)の提供とし、その後は煎茶や焙じ茶の提供となりました。

ぽかぽか陽気の時は縁側で、雪の降った年は炬燵に潜り、お酒が飲めない人は用意した桜餅を食べながらゆっくりとした時間を過ごされていました。位置的には正門から入ってすぐのところですので、迎えの車を待つ人の利用も多かったようです。

来年(2024年)に向けて

久しぶりのフル規格の酒蔵開放を無事終えられてほっとしているものの次回に向けて考えなければならないことがいくつかあります。 今後の開催時期をどうするのか。今年のように四月にするか、今までのように三月にするか。

四月開催の場合はお酒も搾り終わって、試飲していただくお酒の選択も幅が広がりますし、瓶詰などの作業の余裕もあります。

三月の場合は直前までお酒が決まらない場合もありましたのでお酒だけに的を絞れば四月開催に分があります。しかしそれ以外の点では三月開催にもかなりの分があります。いずれにせよなるべく早く決定して早々にお知らせしたいと考えています。

もう一つ大きな問題が公共交通機関の問題、佐久平から当社までの移動手段です。2021年10月から佐久平駅からの路線バス「中仙道線」が休日運休となったため、休日に当社までの移動手段がタクシーだけになってしまいました。タクシーは数も限られるし運賃も高いので(往復で一万円以上。東京から佐久平の新幹線の運賃とほぼ同じ)、何らかの送迎手段を考える必要があります。

この他いろいろな問題を数え上げ、一つずつ解決して、来年の酒蔵開放に向けて準備していきたいと思います。

最後にこの場を借りて、ご来場いただいた方々、運営にご協力をいただいた方々に改めて御礼を申し上げます。来年、2024年の酒蔵開放をお楽しみに。