試飲のお酒に関して
酒蔵開放の開催されていた春分の日の頃は、その年の新酒がまだ火入れ前(加熱処理前)であったため、お酒のコーナーを新酒と通常商品とに分けて試飲していただきました。
新酒は、生のまま、原酒で広口瓶で提供し、柄杓ですくって召し上がっていただきました。2016年の記録では、新酒は下記の10種類でした。
普通酒は辛口、速醸タイプA、速醸タイプB、生酛美山錦、生酛コシヒカリの五種類
本醸造生酒、生酛本醸造、生酛純米、純米吟醸、大吟醸
上記の他に、大吟醸二十一年熟成酒(当日限定商品)、大吟醸無濾過生酒(新酒:商品)、春花見(新酒:商品)、前年度の長野県清酒品評会で首席の純米大吟醸(販売あり)
なども広口瓶から柄杓ですくって飲んでいただき、清酒の通常商品は容器もしくはカラフェから注いで飲んでいただきました。
すべてご自分の手酌です。新酒等が12酒類、清酒の通常商品が22種類、どぶろく系が3種類、37種類。試飲で消費された容量は清酒150L程、どぶろくが約50L、甘酒が70Lという結果が残っています。
2014年以降の試飲に提供されたお酒に関しては、当日にお渡ししたチラシの裏面に掲載してあります。
酒蔵開放がきっかけで商品化されたもの
◾️蔵内生熟成(濃醇旨口生酛生原酒常温熟成)
当社のお酒、特に生酛系のお酒は経験的に熟成がゆっくりで、一夏越えてもまだ渋い(若い)お酒が多く、「ひやおろし」で販売するには熟度が足りないと常々考えていました。
そこで加熱処理をしないまま常温で熟成させたら変化も早いのではと考え、どんな変化をするのか確かめるために幾ばくかのお酒を生熟成させてみました。それを2001年の蔵開放で古酒(熟成酒)の一つとして試飲していただきました。
おいしいという方が多かった反面、好みではないという方もあり、商品化はあまり考えませんでした。しかし次の年も試飲に供したところ、気に入った方から杜氏が何度も何度も商品化してほしいと頼まれて閉口したという話を聞き、商品化を決意。2003年10月から「蔵内生熟成」という名前で販売を開始しました。今も定番商品の一つです。
◾️十二六(活性どぶろく)
酒蔵開放を始めた時から、当時の中澤杜氏が「お客様がこんなに来てくれるのだから、なにかこの日だけ飲めるお酒、出来たてのお酒を作れないか」と提案があり毎年いろいろチャレンジしてみました。
しかし清酒は「搾る」という作業工程が不可欠なため思うようなお酒が造れないことも判ってきました。ところが2001年にその他の醸造酒(当時は雑酒)の製造免許を取得したことで状況が変わりました。
当時「日本酒ライスパワーネットワーク」という全国の二十数社で構成される、低アルコール酒を作るグループで、経営改善の一つの手段として米を発酵させて作った「ライスパワーエキス」を使ったお酒の開発を目指しました。
その過程で普通よりは有利な条件でその他の醸造酒の製造免許を取得することが出来ました。この免許で最初に作ったお酒が胃に優しいお酒「米米酒」というお酒でした。当時は先ずは米米酒の製造と販売のほうに頭が言っていたのですが、その後よく考えてみると同じ製造免許でどぶろくを作ることが可能であることに気づきました。
そうなればそれ以前から作っていた「ハートホリデー」という低アルコール酒(特許の関係で日本酒ライスパワーネットワークの会員しか製造できません)の技術を活かして当日に飲み頃になるように、アルコール分5%くらいで発酵している最中のお酒をつくるのは簡単でした。どぶろくは搾らない(正確には搾ってはいけない)お酒ですので、当日出来たてを飲んで貰うことができます。このどぶろくは2002年の蔵開放で初お目見えしました。そして酒蔵開放でどぶろくを飲んだ大勢の方の声におされて、いろいろ難題がありましたが2004年10月から「十二六」という名称で一般販売を開始しました。
その後どぶろくフェスタで大賞をいただくなどして、現在も当社の売れ筋商品の一つとなっています。
つまみと食事
◾️野沢菜漬け
当社の試飲会場内で食べられる(提供する)食べ物は、野沢菜だけとしています。
野沢菜漬けは二種類用意しています。一つが我々がいつも食べている古漬けと開放の直前に着けた時漬けです。
古漬けは地元で冬の間食べられている野沢菜漬けで、大体十一月に着けて、だんだんと乳酸発酵が進み、旨味と若干の酸味がある漬物です。丁度三月頃にはそろそろ酸っぱくなりかけの一番おいしい時期で、当社の生酛造りのお酒、熟成したお酒等と合わせるとお酒が際限なく進む、信州人には答えられない味です。当社では毎年地元産の野沢菜を200kg前後漬けています。
時漬けは蔵開放のために、三月上旬に野沢菜を取り寄せ(ほとんど四国産です)、細かく切らずに長いまま十日ほど塩漬けにしたものを召し上がっていただく直前に刻んで、大葉の千切りをまぶし、さらにレモン果汁を掛けます。歯ごたえの良い野沢菜二、大葉のフレッシュな香り、レモンの酸味とが混ざって、大吟醸や生酒などフレッシュな味わいのお酒にはぴったりです。
ちなみに、2019年には、古漬けを75kg(着ける際の野沢菜重量)と、時漬けを65kg(野沢菜重量)を用意して、ほとんど無くなってしまいました。
古漬けは暖かくなると徐々に酸っぱくなってしまうため、三月いっぱいが提供できる限界です。(塩抜きをして油で炒めるなどするとまだまだ食べられますが)。2023年は四月開催となったため古漬けの提供が出来ず残念でした。今後開催時期を三月に戻すか、どこかで保管して貰うかなど思案のしどころです。
◾️手打ち蕎麦
二年目の2000年(平成12年)からは、手打ち蕎麦の提供を始めました。「協西えいっこの改」の方々が大勢で来て下さって、手打ちの実演からざるそばの提供までお任せでやっていただきました。この会の方々は農業を主にされる集団で、自分たちで蕎麦を育てて、そのそば粉で蕎麦を打っていらっしゃいました。
毎年新蕎麦の会、缶蕎麦の会を開催されるときは県外からも多くの方がいらっしゃるほどの人気があり、当社の酒蔵開放も、この蕎麦を食べに来る方により賑わっていたとも言えるかもしれません。最初のうちはのど越しの良い白い吟醸蕎麦でしたが、あとの方になって製粉機を買われてからはどちらかというと黒っぽい田舎蕎麦風で食べ応えのある蕎麦でした。
2000年から15回にわたってお世話になったえいっこの会の方々ですが、後継者難等あり2014年までで終了し、2015年からは蕎麦打ちの段位の獲得を目指す人達で構成される「信州そばがき隊」にお願いしました。遊休農地を借りて蕎麦を栽培し、その粉で蕎麦を打っています。
農地の持ち主は遊休農地でも毎年二回くらいは草刈りをしないと雑草が生い茂り大変なことになるのですが、それを人に頼むとお金がかかる。でも蕎麦を巻くと、雑草より蕎麦の方が生育が早いので雑草が生える魔がない。しかも年二回収穫できるので雑草を刈る必要が無い、ということでどんどん蕎麦の耕作地を増やしています。
また、蕎麦打ちの段位を取るには、蕎麦打ちの回数をこなすことが必要、しかも一回で粉2kgを打つ練習が必要ということで、積極的に各種イベントで蕎麦打ち、蕎麦の提供を行っておられます。
そのイベントのサイクルの中に当社の蔵開放も組み込んでいただき、コロナ禍前に5回、そして今年(2023年)と六回参加していただきました。
蕎麦はえいっこの会はざる蕎麦でしたが、提供までに手間がかかり人手も多くかかるため、ぶっかけ蕎麦での提供をお願いしています。
◾️蓼科牛のハンバーガー
蕎麦だけではお腹にたまらない、という声が増えてきたので、2010年(平成22年)から、地元でキッチンカーで蓼科牛のハンバーガーを販売しているSun’sさんに来ていただいてハンバーガーの提供を始めました。
牛肉のパテを焼いているときって、良い匂いがするんですね。匂いのことを考えていなかったので初めての年、ハンバーガーを作り始めた時の匂いが気になったのですが、試飲会場からは離れていたため悪い影響はありませんでした。
初めのうちはキッチンカーを苦労して会社内(会場内)に入れて焼きたてを販売していただいていたのですが、そのキッチンカーが壊れて、牽引する形式に変わってからは会社内に入れることができずちょっとはなれた社員用の駐車場でハンバーガーを焼いて持ってくる形式になってしまったのは残念です。
毎年、今年の新酒の中でハンバーガー似合うお酒は?と考えるのが楽しみでした。毎年四合瓶で4~6本程度用意するのですが、全て飲んでいただけたように記憶したいます。Sun’sさんには今年(2023年)も来ていただきました。
◾️蕎麦、ハンバーガー以外の食べ物
敷地内に余裕がないため、現在以上の食べ物の提供はほぼ無理だと考えています。ただ、大勢に提供できてお酒に合いそうなピザは(どこかにピザ窯を作って?)チャレンジしてみたいとは思います。
◾️甘酒、十二六、酒粕のコーナー
お酒以外の飲み物として甘酒は大好評で、近所のお年寄りが大勢試飲し、購入していかれます。(どうもご自分で作った甘酒と比較している方も多いようで、毎年ヒヤヒヤものでした)。
この甘酒の提供場所の並びに、その他、特にお酒を飲まない方(運転手、子供、お年寄り)のことも考えて、ちょっとした食べ物などを召し上がっていただくコーナーも十年ほどは続けていました。
このコーナーはもしかすると私が一番楽しんでいたコーナーかもしれません。
主には甘酒と、甘酒の味変(チョコレート、ヨーグルト、柚子は鉄板)。次に人気が高かったのが酒粕に砂糖を加えをお湯で溶いて寒天で固めたお菓子(もどき)。これは多いときで酒粕5kgほど使っています。
あとはアルコールがあるので運転手は二十歳未満の方にはお召し上がりいただけないですが、まずはどぶろく(十二六)とそれの味変。年によって変わりますが、緑(抹茶)、黒(竹炭)、紫(山ぶどう)、赤(トマト)、オレンジ(食用ほおづき)、ブルーベリーに赤ワイン等、色と味が変わるものを選んで提供しました。板粕で作った甘酒も人気は上々でした。
その他十二六ムースに米米酒ジュレなど寒天を利用したものも押し並べて評判は良かったようです。また大吟醸の練粕をリッツに載せると極上のカナッペに早変わり。これも人気が高かったのですが、子供達にリッツだけ食べられてしまい残念な結果に終わった年もありました。
その他最初の頃は、米粉で味噌を入れた食パン(秘密のライスパワーエキス入り)を二年ほど提供しましたが、社長宅の食パンメーカーを使ったため、二日間掛けて十本程度しか焼けず、大変だったので辞めてしまいました。お酒のつまみにもよかったのですが。
来場者が増えてきて、なるべくお金を掛けずに楽しんでいただこうと考えるのは楽しみでした。その反面、作らなければならない家族の協力なしには実現しなかったことなので、いまさらながら感謝の念を新たにしました。